エコアクション21に関する私見と提案

 昨年12月に新たに公益社団法人へ移行した当協会は、8つの事業のうち、エコアクション21(以下、EA21という)を2つ目の公益目的事業にあげ、EA21に対する積極的な支援活動を展開している。私もその審査人の一人であるが、EA21のあり方について、常々検討すべきテーマでなないかと思ってきた事々を思いつくままに提起し、会員及び審査人の皆様のご批評を仰ぎたい。

 1.EA21の特徴(特長)を生かすこと:
 いうまでもなく、EA21は我が国(環境省)がISO14000シリーズ(以下、便宜的にISOと略す)をベースにして作成したものであり、ISOの精神や規格の要求事項がほぼ同様に盛り込まれている。ISOと比較して、EA21の特徴はいろいろあるが、一番大きな特徴は、CO2(他に廃棄物、水等もあるが)の削減管理と環境活動レポートの公表が必須条件になっていることであり環境省らしい条件設定になっている。また、できる限り要求を軽減して、受審者の経費抑制を図っていること、審査時の助言(コンサル等)に関してISOよりも柔軟に認めていると思われることなども特徴(特長)と言ってよいと思う。

 EA21を敢えてISOの”簡易版”という必要はないが、このISOには無い”容易性”をあくまで守り続けることがEA21を存続させ普及させる原点と思う。要求事項や規則をさらに強化することでISOに近づけようとすると、経費、事務局の人件費等の増加で結局ISOと変わりがないものになり、EA21の良さが失われてしまうことになりかねない。

 一方、審査人の中にはEA21はISOと違うのだからとの理由でISOを軽視する傾向があるが、あくまでISOがそのベースになっている。審査人は、EA21の1#~13#(環境活動レポート関連を除く)までの要求事項がISOのどこからきているか十分に理解し検証してほしい。そうすれば、どのような審査をするのがよいかが自ずと判るはずである。審査人は少なくともISOの内部監査員程度の知識と資格を身につけることが好ましいと思う。

 2.環境目的・目標の設定について:
 EA21では、CO2、廃棄物、水等の必須管理項目があり、環境負荷及び環境取組のチェック(ISOでいう環境側面の抽出・評価の部分)が様式化されているため、どうしてもこの部分(項目)にウェイトがかかり、これに続く目的・目標設定が所謂、”紙・ごみ・電気”中心の設定になってしまう場合が多い。しかし、大きな環境負荷を持つ製造現場等は別として、オフィス活動が中心の中小の組織では、”紙・ごみ・電気”では、数年も経つと効果が頭打ちになりEA21活動が行き詰る傾向がある。

 2004年に改訂されたISOでは、”組織が直接管理できるもの”と”組織が影響を及ぼすことができるもの”を同様に評価し目標管理につなげることを唱えている。”紙・ごみ・電気”的なものは前者に、グリーン購入、社会貢献、環境配慮型製品・サービス等は後者に近いコンセプトと考えられる。従って、登録から数年後には、”紙・ごみ・電気”中心から後者関連の環境目的・目標にウェイトがシフトするように意識づけすべきであり、この方がより業績改善につながる傾向が大きい。私は、環境活動レポートの目標管理及びその評価項目として、前述の後者に関連した記述を多くするよう推奨している。

 3.審査の仕方について:
 審査人は、環境関連の理解や知識は十分に保持しているが、審査の仕方(テクニック的なものも含む)は、まちまちであり、受審者からのクレームの原因ともなる。そのため、審査人は審査手法等について、審査人間で絶えず研鑽する必要がある。義務として果たされる1年1度の審査人力量研修会だけでは十分でないと思う。

 4.審査報告における様式について:
 様式9はコミュニケーションシートとして、当該受審組織に関する審査人間の連絡・引継等に使用されれば有効であるが、今のところ十分に効果をあげていないと思われる実態がある。ISOの審査機関では、審査員間で電子情報として閲覧できる仕組みができている。審査人が交代した場合の受審者への配慮としても重要であるとも思われ、今後の課題である。

 5.提出文書・記録について:
 審査後の提出書類として、様式1~様式9以外にそれぞれ8種類の文書と記録を提出することになっている。このうち、8種類の文書と記録は、現場審査において手順どおり審査人が審査しておれば、当然確認しているものであり、これを再提出させるということは、平均して審査人の力量があまり信用されていないということであろうか。ISOでは、これほど多くの内部資料を提出させることはない。問題なのは、これらの文書・記録類の中には、受審組織にとって内密にしたいものもあるはずであり、これらの情報漏洩防止について現状では何も担保されていない。ISOでは、審査終了後に書面類は返還し、関連の電子情報は全て消去することを誓約して帰るのが普通である。(いちいちISOと比較するつもりはないが、経費がかからず良い点は改善を検討することが必要と思う。)添付書類は、最低限するよう再検討すべきと思う。

 6.判定会について:
 判定会の目的・任務は、対象の受審組織がEA21規格の要求事項をクリアしているかどうかを、審査人の審査報告書や添付資料等を基に判定することである。更に、単に規格への適合性だけでなく、審査人がはたして受審組織にとって有効・有益な審査をしてきたかどうかを判定することも含まれる。そのために一番重要なものは様式6であり、補足的に様式2、様式5及び様式9である。この内容・書き方によって、審査人がどんな審査をしてきたかがわかる。

 現在は義務化されていないが、審査時の審査記録(メモ書きでよい)の提出を審査人に義務づければ更に的確に判定ができると思われる。

 判定会は、審査人と同じ目線で、付属のデータ類の追試・チェックすることだけではない(これはむしろコンサルの仕事である)。原則的に、これらの資料は、審査人が現場審査で確認済のことであり、凡そは、審査人を信用していただいて、むしろ審査人の審査、所見の判断に間違いがないか、有効な審査をしてきたかに重点を置いて判定していただきたいと思う。

(大阪技術振興協会会報No.443(2013.11)掲載)